聖蹟桜ヶ丘駅と多摩川を結ぶ動線の計画である。
悠々と流れる多摩川河川敷の景観は駅周辺からそこまでの物理的距離はないものの大型の商業施設のボリュームや土手によるレベル差などもあって精神的な距離感を感じる現状があった。
私鉄会社であるクライアントの思いとしてはそのような距離感を払拭し豊かな自然環境と駅前環境の融和がテーマに据えられていた。
そこでその緩衝帯となっている建築ボリュームの一部(立体駐車場)に多摩川の雰囲気を映し込み川沿いの商業施設への誘導や生活動線としての活用を意図した立体歩廊を構築することとなった。
我々は立体駐車場という機能優先の建築空間に水の流れを示唆するような床仕上げを施すとともに駐車区画との緩やかな緩衝ボリュームを設け、外光の助けによりあたかも川面を歩いているような楽しげな回遊路を作るイメージに辿り着いた。
岐阜の瑞浪で丁寧なものづくりを行う玉川釉薬というメーカーに出会う機会が重なり、計画のイメージを共有、協議を重ね、釉薬会社ならではの十色の青が提示された。歩行空間としての防滑性への配慮や既存PC床版との取り合いを意識し30mmの目地を一様に取るなどの工夫を施すことにより殺伐とした駐車場空間とのマッチングを叶えるに至る。
こうして駅からの川への路地空間の創出を契機に河川敷のポテンシャルをさらに引き出していくような川と街一体の計画が今後も進めていくであろうことを願う。
所在地 | 東京都多摩市 |
竣工 | 2024.03 |
施工者 | 京王建設 |
面積 | 410.5㎡ |