
型枠脱型後ポリスチレンフォームを圧着し、出隅部はR 状に加工。ガラスメッシュとプライマーで下地調整後、耐候性と透湿性能を有するアクリルシリコン系の薄塗左官仕上げとしている。








池ノ上と下北沢の間、踏切の音が聞こえる間口7.2m奥行12.5mの敷地である。
かつては池ノ上第一コーポというアパートが建っており同オーナーよりRCの賃貸住宅への建て替え依頼であった。
そこで我々は下北沢というローカリティに愛着を持ちその場での生活がグローバル化している人物像をイメージし設計を行った。
間口の狭さをポジティブに変換すべく京町家のように間口に対して奥行きの全てが容積となるような重層長屋の提案を行った。上階への個別アクセスのプランニング及びメゾネットの有り様が素直に外観の形態となっている。
断熱性の確保からインテリアがラッピングされがちなRC造住宅の有り様が人物像から相反すると考え外断熱を採択。インテリアは型枠を外したそのままの言わばスケルトン状態である。一方かつてのアパートを踏襲したカラーリングの外装は都市に対してインフィル的になっているかもしれない。
また周囲を近接した建築に囲まれる地域特性から1階壁面からの彩光は諦め、桁行一杯のトップライトを施すこととした。そのため建築の主構造は中心の間仕切り壁に頼るいわゆるやじろべえ的な構造手法をとっている。
こうして結果的に隙間から光が漏れるガード下のような空間が1階にできた。2階は室内及び室外で接続する3階を有したメゾネット形式で構成されている。
リーシングが始まると問い合わせの大半は店舗ニーズであった。そんな状況を面白がりつつ、商売と生活の場が混在していることと、奥に深い町屋のプランニングに敬意を払いつつ「池ノ上ノマチヤ」と名付けた。
余談であるが施主は大学の同級生で下北沢界隈に幾つかの土地を所有する地主であり工務店も経営している。今回は事情があって他社施工となっているが彼は毎日現場に来た。
界隈で代々生業としている彼にとってはそれが当たり前のことであり、そんなローカルど真ん中の彼がこのような設計を理解し、地元不動産屋さんとの橋渡しをしてくれている様相は建築の可能性を拡張していると感じた。
さらに余談であるが建築写真はフランス人写真家でありその知人のフランス人カップルが最初の内見。外装の塗材はスエズ運河を渡って大分遅れて現場に到着した。
竣工 | 2024年12月 |
所在地 | 世田谷区北沢 |
用途 | 長屋(4戸) |
構造 | 壁式鉄筋コンクリート造 |
敷地面積 | 118.73㎡ |
建築面積 | 82.95㎡ |
延床面積 | 180.00㎡ |
意匠設計・監理 | 古谷デザイン建築設計事務所/古谷俊一 秋真人 前澤実優 |
構造設計 | 長坂設計工舎/長坂健太郎 |
施工 | 栄港建設/中原一芳 池ヶ谷まみ |
空調・電気 | アクラ/北條一美 |
衛生設備 | アクア齋藤設備企画/齋藤謙治 |
型枠 | 佐々木工務店 |
写真 | Vincent Hecht |
