太東ビーチに面する高台に建つホテル

太東プロジェクト

TAITO project

海岸線に面する高台に建つ。これらの地山を削って九十九里の海岸線が形成された歴史があり、その自然に対する敬意を払った建築にしたいと考えた。  
南庭の陽光を北側(海側)に抜けさせるために構成したヴォイド空間。南側には日差し抑制のための庇と常緑広葉樹が日除のために計画されている。
南北の開口が通る様子。海の景観と陽光溢れる南庭が双方付帯し繋がることを意識した内装設計
海岸から建築全体を見上げる。崖下の植栽はおおよそは既存樹である。
20年ほど前にあったリゾート計画のための仮囲い鉄板がこの樹木帯を塞いでいた。開放された樹木はこれから旺盛に育っていくであろう。
エントランススペース 階段の昇降により海岸線のシークエンスが上下する。
1階ダイニングスペース
柔らかいカーテンを引くことで、屋外の環境と穏やかに距離をとりながら、光や風の気配を室内に取り込む。
1階ダイニングスペース
プールに接する開口部を開放すると室内でありながらプールサイドのようなアウトドア感をインテリアに引き込める設計。
2階リビングスペース 
オーナー企業の会議体にも対応する大型のダイニングテーブルと重心を下げるソファーの設定。
敷地と九十九里浜の関係。九十九里の南端に位置する希少立地であるため海岸線をはるか銚子まで見渡すことができる。
砂浜や海岸線のカーブライン、海食崖とみどりが織りなす景観。これらと響き合う建築のあり方がをめざした。
耐潮性および耐暑性を考慮した樹種を選定。
揺れる葉の隙間から、開口部を通して海岸線へと視線が抜ける。
1階ゲストルームと海岸線との関係
1階ゲストルームと南庭との関係
2階共用廊下。日差し抑制のため庇とカーテンおよび将来樹木による緑陰が影を作る。
2階 ゲストルーム-7
奥の温湯に身を沈めれば、視界いっぱいに広がる水平線。左の扉の先にはサウナ室、手前には水風呂。右の扉は外へとつながり、サーフィン後にそのまま入浴できる動線を確保。
ボード小屋(別棟)はサーファーのための大切な空間。身支度を整え、海へと向かうための場。
空が群青に染まるころ、建築は静かに光を放ち始める。波音と風の気配に包まれながら、内部と外部の境界が緩やかに溶け合っていく。
光と風

岩礁の景観と融和し、地域と共にある建築

千葉県いすみ市。東京オリンピックのサーフィン競技の会場に隣接する太東ビーチに面する高台にこの建築は建つ。

太東岬はその海蝕によって砂を生み出し美しい九十九里浜の海岸線を形成してきた歴史がある。現在九十九里浜には諸々の事由により砂の供給が減り海岸線の担保にさまざまな施策が講じられていることを知った。
一つの建築にその問題を解消する力はないが、せめてこの希少な景観との融和をテーマに、削られた岩礁が特徴的な太東海岸の景観と一体となった建築が作れないものかと思案した。

崖要件や構造耐力また塩害も鑑みた上で350mm 角のスレンダーなRC 構造フレームを基調に所要の空間を確保。優美に湾曲する九十九里の海岸線に呼応する平面形状を敷地なりに展開し、北に望む海と敷地内の南庭をつなげるべく外部空間の貫入(プール)や南北貫通を意識したプランニングがなされている。

ローカルサーファーという言葉がある。地元の波を共有するための仁義的意味合いもあるが、自分達のエリア(地域)を大切にするというポジティブな意識に寄り添うように、周囲の環境の良化に貢献する建築に成長していくことを願って設計に力を込めた。

竣工2024年9月
所在地千葉県
用途ホテル
構造鉄筋コンクリート造
敷地面積2540.57㎡
建築面積560.12㎡
延床面積794.99㎡
意匠設計・監理古谷デザイン建築設計事務所/古谷俊一 秋真人 中川広海
構造設計KAP/萩生田秀之 関本拓郎
設備設計ZO設計室/ 柿沼整三 伊藤教子 黒木靖子
ライティングデザインNEW LIGHT POTTERY/永冨裕幸 奈良千寿
家具・植栽コーディネート古谷デザイン建築設計事務所/古谷俊一 宮脇久恵
施工(建築)笹原工務店 /宮崎伸一 鈴木昭弘 後藤匡仁
設備工事高和設備/山田賢
電気工事 ツカサ電業/三熊康太
家具工事松本家具製作所/松本勝一 西谷大介
家具工事HAY hutte design/安井秀行
植栽工事大綱ガーデン/ 酒井栄一
撮影中山保寛
現場空撮  Photo by 笹原工務店
現場空撮  Photo by 笹原工務店