
サウナの外壁は間伐材のヒノキ太鼓材を型枠として、コンクリートを打ち込み残置している。


スギ板の縦張り外壁は、時間とともに周囲の木肌へ近づき、建築が風景に馴染んでいくことを意図している。



スギ板とモールテックスを用いた静かな素材構成が、森の緑を受け止める背景になっている。
プレイルームは将来ビリヤード台の設置を想定し、北側の光を柔らかく拾うよう天井高さを慎重にコントロールした。

最高天井高は梁上で4,540mm。床は外部同様のコンクリート洗出し。カーペット付近は金ごて押さえとするなど居場所に応じて粗度のグラデーションをつけている。


プレイルームの天井高は、いちばん低いところで2,200mm。






屋根は草屋根とし、湿った空気や樹木の匂いと溶け合うスケール感をもたせた。
外壁には間伐材のヒノキ太鼓材を型枠として利用し、木と土の両方の質感を併せもつ独特の表情を生んでいる。


ピンク色の耐熱強化複層ガラスが淡い光を落とし、森の気配がうっすらと室内に差し込む。





大屋根がつくる柔らかな居場所
大涌谷の赤茶けた山肌と揺らぐ噴煙、裾野には揺らぐススキ野原。ゆらゆらと霧が立ち込めそれらの景色を隠し雲に浮いているような感覚にもなる。敷地には尾根伝いにアプローチする車道のほかに山下までまっすぐに切り通された人道があった。その切り通しを抜ける風を感じ、この流れを大切にする設計を目指すことにした。そこで三角形の敷地にフィットし、気のいい風が庭に吹込む平面形を想像し、そこへ鳥が羽を休めたような切妻屋根を架けた。結果として降り立った建築は崖下からは見えず、身を隠すような格好となった。
羽先の一方は玄関アプローチのためのポーチ、他方は休息の象徴たる半露天風呂やサウナ小屋が接続するようなかたちである。羽を広げた両端を繋ぐ長辺25mは前庭に対峙し、遠望する景観を取り込み、将来ビリヤード台を設置する予定のプレイルームまで光を届けると共に、大きなヤマモミジの緑陰をインテリアにも落とす。三角形平面により導き出された各所の開口部周りは、アルコーブと共に内外が一体化される効果を生んでいる。
一方で建主は、この地を休息の場として選び、ゆっくりと自然環境と親しみつつ、暮らしに使うエネルギーに対す自身の考えをデザインする実験場にしたいという考えがあった。建主と共に構築した、住宅と人間の対話を生む、蓄電残量エネルギーが暮らしの電力を制御するインタラクティブデザイン(グリーン誘導型パワーマネジメントシステム)は、雷の落ちた停電の夜に蝋燭で過ごした子供心の記憶のように、建築と人間を近しいものとして感じさせてくれる。
そんな緩やかな思考とふわふわとした自然環境に包まれながら優しい時間を過ごすべく、敷き込まれた絨毯は前面の芝生の庭と呼応するように大屋根の下の干し草のベッドのようでもあり、木質系高断熱材と輻射熱空調の効果もあって親鳥の優しい羽毛の中で休まるひなのような感覚になる。エネルギーマネジメントの作法と同様に、家具によって居方を規定されることがない場所となった。
| 竣工 | 2025年3月 |
| 所在地 | 神奈川県足柄下郡箱根町 |
| 用途 | 別荘 |
| 構造(母屋) | 木造在来軸組工法 |
| 構造(サウナ小屋) | RC造 |
| 敷地面積 | 992.27㎡ |
| 建築面積 | 162.53㎡(サウナ小屋含む) |
| 延床面積 | 169.63㎡(サウナ小屋含む) |
| 階数 | 地上2階 |
| 意匠設計・監理 | 古谷デザイン建築設計事務所/古谷俊一 豊島香代子 中川広海 |
| 構造設計 | KAP/萩生田秀之 関本拓郎 |
| ライティングデザイン | spangle/村角千亜希 二ノ倉絵里 |
| グリーン誘導型パワーマネジメントシステム | アートアンドプログラム/リーダー アレキサンダー |
| 家具・植栽コーディネート | みどりの空間工作所/古谷俊一 宮脇久恵 |
| 施工(建築) | 栄港建設/齋藤大作 |
| 設備工事 | 相設/相澤有一郎 相澤行廣 |
| 電気工事 | 湯山電設/島大 堀川大翔 |
| 外構・造園工事 | 青木建設/青木一幸 |
| 木工事 | マス建築/ハフェジマスウッド |
| 加藤工務店/加藤裕介 | |
| プレカット | 山長商店/真鍋淳弘 |
| 基礎 | 青木建設/青木一幸 |
| 左官 | 今城左官/今城哲治 |
| 屋根板金 | カズマサ/和田正明 |
| 鋼製建具 | 総武/三星好美 |
| 木製建具 | 建具屋義/長野義信 |
| 家具 | 松本家具製作所/松本勝一 神宇哉 |
| 塗装 | 瀬戸塗装/瀬戸健作 |
| 内装 | プラスデザイン/山根章弘 |
| サウナ小屋緑屋根 | イケガミ/池上靖幸 |
| 植栽工事 | 大綱ガーデン/ 酒井栄一 |
| 撮影 | 山内紀人 |