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仙石原の自然に寄り添い、羽を休めるように佇む大屋根の別荘

Flying Sengokuhara

北側外観。大涌谷やススキ野原が見渡せる山に建つ別荘。軒先が窄まった、南西側の妻面が高くなった切妻屋根が架かっており、敷地の北側には草屋根のサウナ小屋を設けた。
サウナの外壁は間伐材のヒノキ太鼓材を型枠として、コンクリートを打ち込み残置している。
南西側俯瞰。屋根には太陽光パネルと、建主が別荘に滞在していない時でも周辺の景色や音を楽しむためのカメラが載っている。
軒を低く保ちながら妻側を高くする特有の切妻形状により、山の稜線に溶け込む姿となった。
スギ板の縦張り外壁は、時間とともに周囲の木肌へ近づき、建築が風景に馴染んでいくことを意図している。
大屋根と、草屋根のサウナ小屋が森に沈む。
リビングダイニングキッチンから北側を見る。屋根が高くなった部分には2階がある。
キッチンからプレイルームまで視線が抜ける開放的な一体空間。
スギ板とモールテックスを用いた静かな素材構成が、森の緑を受け止める背景になっている。
プレイルームは将来ビリヤード台の設置を想定し、北側の光を柔らかく拾うよう天井高さを慎重にコントロールした。
リビングダイニングキッチンから南西側を見る。平面は敷地形状に合わせた直角三角形で、長辺を活かし眺望を最大限取り込んでいる。
最高天井高は梁上で4,540mm。床は外部同様のコンクリート洗出し。カーペット付近は金ごて押さえとするなど居場所に応じて粗度のグラデーションをつけている。
屋根は自然公園法による切妻屋根とし、三角形の長辺の中腹をもち上げるように通した棟梁から短辺の水平な軒先へ登り梁を掛けている。
プレイルームの天井高は、いちばん低いところで2,200mm。
洗出し左官仕上げと木梁の質感が本棚の灯りと溶け合い、森に寄り添う仕事場となる。
十和田石の浴槽から連続する動線。落ち着いた光が奥のポーチまで導く。
バスルームから北側を見る。浴槽は十和田石で、建主が拾った石をタオル掛けや吐水口のハンドルとして利用。建具を解放すると屋根の先端、その先のサウナ小屋まで繋がる。
2階。棟が見える。天井高は梁上で430~2,270mm。
構造現しの小屋裏。低い天井が落ち着きをつくる。
斜面に潜り込むように設えたサウナ小屋。
屋根は草屋根とし、湿った空気や樹木の匂いと溶け合うスケール感をもたせた。
外壁には間伐材のヒノキ太鼓材を型枠として利用し、木と土の両方の質感を併せもつ独特の表情を生んでいる。
ヒノキ太鼓材の型枠打放しと草屋根が、母屋と森をつなぐ“もうひとつの小屋”。
内部は吉野桧で統一し、熱源の力強さと木の柔らかさを共存させた。
ピンク色の耐熱強化複層ガラスが淡い光を落とし、森の気配がうっすらと室内に差し込む。
吉野桧の香りと薪ストーブの熱が濃密に混ざる空間。
大屋根の陰影が森へ沈み、内部の灯りが外の緑をやわらかく浮かび上げる。
木梁と左官壁が照明の陰影を受け、奥のアトリエまで連続する一体空間が際立つ。

大屋根がつくる柔らかな居場所

大涌谷の赤茶けた山肌と揺らぐ噴煙、裾野には揺らぐススキ野原。ゆらゆらと霧が立ち込めそれらの景色を隠し雲に浮いているような感覚にもなる。敷地には尾根伝いにアプローチする車道のほかに山下までまっすぐに切り通された人道があった。その切り通しを抜ける風を感じ、この流れを大切にする設計を目指すことにした。そこで三角形の敷地にフィットし、気のいい風が庭に吹込む平面形を想像し、そこへ鳥が羽を休めたような切妻屋根を架けた。結果として降り立った建築は崖下からは見えず、身を隠すような格好となった。

羽先の一方は玄関アプローチのためのポーチ、他方は休息の象徴たる半露天風呂やサウナ小屋が接続するようなかたちである。羽を広げた両端を繋ぐ長辺25mは前庭に対峙し、遠望する景観を取り込み、将来ビリヤード台を設置する予定のプレイルームまで光を届けると共に、大きなヤマモミジの緑陰をインテリアにも落とす。三角形平面により導き出された各所の開口部周りは、アルコーブと共に内外が一体化される効果を生んでいる。

一方で建主は、この地を休息の場として選び、ゆっくりと自然環境と親しみつつ、暮らしに使うエネルギーに対す自身の考えをデザインする実験場にしたいという考えがあった。建主と共に構築した、住宅と人間の対話を生む、蓄電残量エネルギーが暮らしの電力を制御するインタラクティブデザイン(グリーン誘導型パワーマネジメントシステム)は、雷の落ちた停電の夜に蝋燭で過ごした子供心の記憶のように、建築と人間を近しいものとして感じさせてくれる。
そんな緩やかな思考とふわふわとした自然環境に包まれながら優しい時間を過ごすべく、敷き込まれた絨毯は前面の芝生の庭と呼応するように大屋根の下の干し草のベッドのようでもあり、木質系高断熱材と輻射熱空調の効果もあって親鳥の優しい羽毛の中で休まるひなのような感覚になる。エネルギーマネジメントの作法と同様に、家具によって居方を規定されることがない場所となった。

竣工2025年3月
所在地神奈川県足柄下郡箱根町
用途別荘
構造(母屋)木造在来軸組工法
構造(サウナ小屋)RC造
敷地面積992.27㎡
建築面積162.53㎡(サウナ小屋含む)
延床面積169.63㎡(サウナ小屋含む)
階数地上2階
意匠設計・監理古谷デザイン建築設計事務所/古谷俊一 豊島香代子 中川広海
構造設計KAP/萩生田秀之 関本拓郎
ライティングデザインspangle/村角千亜希 二ノ倉絵里
グリーン誘導型パワーマネジメントシステムアートアンドプログラム/リーダー アレキサンダー
家具・植栽コーディネートみどりの空間工作所/古谷俊一 宮脇久恵
施工(建築)栄港建設/齋藤大作
設備工事相設/相澤有一郎 相澤行廣
電気工事湯山電設/島大 堀川大翔
外構・造園工事青木建設/青木一幸
木工事マス建築/ハフェジマスウッド
加藤工務店/加藤裕介
プレカット山長商店/真鍋淳弘
基礎青木建設/青木一幸
左官今城左官/今城哲治
屋根板金カズマサ/和田正明
鋼製建具総武/三星好美
木製建具建具屋義/長野義信
家具松本家具製作所/松本勝一 神宇哉
塗装瀬戸塗装/瀬戸健作
内装プラスデザイン/山根章弘
サウナ小屋緑屋根イケガミ/池上靖幸
植栽工事大綱ガーデン/ 酒井栄一
撮影山内紀人