街の隙間に現れたグリーンと「人の居場所」が敷地を越えて街へ広がる

eM / PARK BLDG.

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立体的につながる露地を回遊する人々
既存駐車場へと外部階段を貫入。敷地を一体化している。
道路境界線を跨いで、通りに面して植物が並ぶ。
イベント時、駐車場に緑が広がったような風景
駐車場から建物を見る
イベント風景。軒下の露地空間で子供たちがワークショップを行う
1階レストランから駐車場側を見る
デッキテラスにあかりが灯る。シンボルツリーはカツラの木
ファサード。建物のズレた隙間から植物が溢れる。
配置図。コンクリートに囲まれた街並みに、みどりが広がっていく。

駅前市街地の景観再生プロジェクトである。
当該敷地の立体駐車場および周辺ビルを所有するオーナーが、周辺住民の集まる商業施設を作り溝の口のイメージを変えるような街並みの創出に貢献したいという考えに共鳴し設計は始まった。オーナーの生家のある線路向こうの緑地エリアとイトーヨーカドー周辺の緑地帯をつなげるような結節地点にある敷地特性を生かし、都市の露地のような機能を付与したいと考えた。敷地周辺北側には、鉄道により分断された緑地エリアがあり北側路地より通りへ抜ける貫通通路を設け回遊性を向上させる。
一人のクライアント、一人の建築家ができることは限られる。ただその限られた敷地の道に面する部分には草木を植えて通りに少しでも彩りを添えよう。お店を作ったらあの腰の悪い人にもストレスのないようなアクセスを用意しよう。密集市街地で換気の良い集まれる場所がないのなら屋上スペースを活用してみてはどうだろうか……
顕著な温暖化、災害、ウィルスの蔓延。健全な社会生活を送るために、もう自分だけの空間を強固に囲って負荷を垂れ流すことは共同生活を毀損するということに皆感覚的に気付かされている。コモンスペース、シェアスペースの概念をもっと拡充してライフスタイル(生業)と密着した情景を作り、その感覚に対する共有感を醸成、これから訪れる超高齢化社会に緩やかに順応する仕組みを作り、経済を回す。
本プロジェクトでは都市の隙間のような空間をみどりの流通場として転換を図り、みどりの街づくりを標榜する傍ら、各人の生活における環境文化の創造に寄与することを目指している。既存立体駐車場の隣地敷地に小規模の商業施設を建築。地縁のある保育園やレストラン、グリーンショップを誘致。駐車場屋上や周辺街路は植木置き場として活用をする。一つの懸かりが周辺に伝播し価値を押し上げ健全な賃貸事業を醸成する。その輪が拡がり街ブランドを形成する。

建築は大きなダルマ落としのような構成で、そのズレた隙間から植物が溢れ出す。そのコンクリートのダルマは粗野な仕上げで既存の街並に対峙、同類の文脈で駐車場のフェンスから緑が溢れ、周辺街路の隙間に商品としての緑が据え置かれる。敷地周辺南側には鉄道により分断された緑地エリアがあり、南側路地より通りへ抜ける貫通通路を設け回遊性を向上させる。

所在地神奈川県川崎市高津区久本3-1-14
竣工2021.03
施工栄港建設
敷地面積305.41㎡
建築面積182.32㎡
延床面積393.88㎡
First Sketch
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