周辺環境との共生・繋がる暮らし

深大寺ガーデン

Jindaiji Garden

環境・緑化事業を行う建主により、植木の圃場として使われていた生産緑地を宅地開発し、住宅2棟とレストランを建てた。それぞれの棟の間の植栽により、既存の敷地が持っていた環境を継承している。
方位学の制約に基づき開口の列が揃ったデザイン。以降ランドスケープの背景として縦のラインを揃えることが美観上のルールとなった。
西側道路より見る。左は A 棟右はレストラン棟、中央奥が B 棟。厚みのある外壁が構造や収納、空気循環など様々な機能をた担保しながら建物に陰影をもたらす。外壁材はケボニー材、大谷石、アルミなど再調達可能なものとしている。
駐車場より南を見る。左奥は B 棟、右は A 棟。左手のレインガーデンに舗装部分の降雨を集め浸透させている。
店舗棟レストラン
A棟
A棟1階LDK。外周壁はケボニー材、他壁天井は漆喰塗り、床は無垢のチェリー材で仕上げられたインテリアに外構のみどりが入り込む
二重壁の奥行きによってできたアルコーブ
食べられる庭(エディンブルガーデン)
平面図
断面図

環境・緑化事業を生業とするクライアント発案によるセミバブリッ クな宅地開発である。交通機関や商業施設との近接さや目先の経済性を頼りにした、無秩序な宅地開発に対するアンチテーゼとし、地域とのつながりを能動的な活動によって作り出し、街との関係性を 自らが構築していく。その際、ステークホルダーは人間以外の生き物や緑、土、川、風など住宅を取り巻く周辺環境であるとする貴重な考え方に触れた。周辺環境との共生、つながる暮らしをテーマとし、建築の単一的な 環境性能を謳うにとどまらず、群として街に対して居心地の良さを 感じてもらい引き込み波及をさせていく。
エネルギーオフグリッド (太陽光、中水利用、蓄電池)、地場産材の活用や使用材料のトレーサビリティ、エディブルガーデン(食べれる庭)などの試みが評価され、米国のLEED for homeプラチナを獲得するに至った。 昔ながらの濡れ縁での夕涼み、伱間風による換気機能、玄関の鐘の音。クライアントの緑に囲まれたつながる暮らしの原風景を頼りに設計は進められた。再調達可能な建材を使用し、機能の必然がデザインとなる。施主、設計、施工者が3者平等に責任を持ち 資産価値が目減りしない建築を創出する。建築家が本来考えなくてはならないレディーメイドの編集ではない環境価値創造の重要さに今更ながらに気づかされるに至った。 屋根は平瓦及び一体の太陽光パネル、外壁はケボニー材とアルミ 、ガラス、漆喰、床は木と石。できるだけ少ない建築言語により構成されている。トリプル耐力壁、設備スペース、断熱空気層。これら構造、設備という機能を纏った厚みのある外壁は垂直に伸びる窓辺にアルコーブを作り出し、ブリースソレイユの効果とランドスケープと建築の緩衝帯となっている。
顕著な温暖化、頻繁に起こる災害、ウィルスの蔓延。健全な社会 生活を送るために、もう自分だけの空間を強固に囲って負荷を垂れ流すことは生物多様性および共同生活の質を毀損することに皆 気づいている。コモンスペース、シェアスペースの概念を拡充して環境創造型のライフスタイル(生業)と密着した情景を作り、 その感覚に対する共有感を醸成、これから訪れる超高齢化社会に 緩やかに順応する仕組みを作り、経済を回していく。
こういった思想の一体感がこの深大寺北町の景観の一部となり、 薪火レストランMARUTAでの人々の集いや保存食づくりなどの ワークショップ活動により地域連携を育み良好な環境回復型の事 例として発信され続いていく。

所在地東京都調布市
竣工2018.12
A棟敷地面積580.05㎡
建築面積219.65㎡
延床面積367.98㎡
階数地上2階
B棟敷地面積904.01㎡
建築面積142.31㎡
延床面積245.24㎡
階数地上2階
店舗棟敷地面積366.96㎡
建築面積139.50㎡
延床面積134.01㎡
階数地上1階
Sketch
Sketch