住まい手の営みが街角をつくる

大森ロッヂ 笑門の家

Shoumon no Ie

南側外観。大森ロッヂのエントランスに建つリノベーションした賃貸住宅。もともと下屋とバルコニーがあった南面に、それらを包み込むようにヴォリュームを再設定した。
家族の生活の場や街との共有スペースにもなるインナーガーデン。2階のヴォリュームと下屋とを繋ぐ吹き抜け空間で、隣家とそのスカイラインを空間に引き寄せる。
東側夜景。右手前の床下換気口が見えている部分が既存外壁の輪郭。床の一部を残し、周囲を土間として切り下げた。
ダイニングから坪庭とインナーガーデンを見る
室1。2階は既存の天井を撤去し、梁を現しにしている
東側よりインナーガーデンを見る

大田区大森西。京急「大森町駅」至近の場所に大森ロッヂはある。昭和の趣きを残す木造長屋の風合いに光を当て、2009年より順次現代のニーズに寄り添い改修。高気密高断熱主義とは真逆の価値を発信。自立共愉というコンセプトの下、入居者イベントなどを通して住まいの相対的価値を更新し続けている。2015年に店舗付き長屋「運ぶ家」が完成する。買うか借りるかという二元論を超え、住まい手が単なる賃借人におさまらず、オーナー、設計者とともに賃貸事業にコミット。参加者が住まいの質を向上し合い続ける関係を構築している。その象徴である燃え代設計の木造柱に支えられた、空中のヴォイド空間は街と空間をシェアするように存在している。2019年に設計者の自邸であるインターバルハウスが完成。運ぶ家の双子のような建築。大森ロッヂを含む街の庭のような建築を作りたいと考え、年々みどりに凌駕される景観が街の庭としてシェアされる存在へと成長している。
本作、笑門の家は大森ロッヂのエントランスを形作る住宅である。街角にインナーガーデンを設け、運ぶ家の2階テラスのように住まい手の営みがそのまま街角を形成する。既存の下屋及びバルコニーを含めた空間を解体。風景を作っていた根拠(構造)は残しつつ、温室フレームで包み込むことで街と住まいの間の緩衝帯(庭)を設け、人の気配や温熱環境を住まい手自らが調整する。パブリックの入り具合、自己と他者がシェアする深度をも自ら調整をするのである。そうしてそのミセ空間では住まい手がその住まい方をプレゼンテーションする場として活用することができる。お店や教室、作業場やオフィススペースなど。ポケットパークのような街角の一角がプライベートともパブリックともつかない性質を帯びて、その中庸なスタンスがそのまま顔になり、街の中で共有される。あっ、そう言う風に街に出てもいいんだな。と言う思いにつながるかもしれない。
個々人が楽しく暮らす様が街の元気につながるような。そんな家が作れたとしたなら幸せである。

所在地東京都大田区
敷地面積102.14㎡
建築面積60.86㎡
延床面積98.12㎡
階数地上2階
Before
Before