既存木造平屋の住宅を活用したSANUとの共同プロジェクト

SANU 2nd Home MON 奄美大島

SANU 2nd Home MON Amami Oshima

月額の会員制別荘サービズ事業を展開するSANUのプロジェクトである。
奄美空港より程近い龍郷町、赤尾木湾に面する海沿いの立地。
「自然との出会いを日常に」というSANUのコンセプトを体現すべく、既存木造平屋の住宅を活用し、奄美の自然の魅力を引き出し、招き入れるような建築に再編するためどのようなデザインが必要となるのか。
敷地は穏やかな内海に接し、海岸の珊瑚石積みの基礎や長年潮風にさらされたアカギが隆々と立つ。敷地内は田中一村の絵画にも頻繁に登場する複数のビロウの樹が葉をもたげ、建築の存在を隠している。

そこで我々はこの奥行きのある奄美の自然と対峙する厚みのある外壁を建築に実装したいと考えた。
建築がこれらの自然と対峙する時どうしても生まれてしまいそうになるその質量差みたいなものに対してそれを緩和していくためのデザインとしていきたいためでもある。
それはファサードデザインの刷新と雨戸や既存アルミサッシを活用しつつ外壁性能を担保するという経済要件を両立する二重壁でもある。新な外壁は木質の材料で構成されビロウの葉陰や繊維状の幹との親和性を高めていく。
また前面道路の交通動線をかわす新たな視点場を設けたいと考えた。小屋裏空間に生まれたその視点場は遠く内海を見晴らし、景観がビロウの樹冠と重なりその葉音と潮騒が協奏する空間になるであろう。

天井を払い出現した大きな吹き抜け空間はその視点場とも連続し、あたかも外部バルコニーのように室内と連続する効果を生む。外部の雰囲気を招き入れ抜けるように設計した中心軸の空間をリビングダイニングなどのパブリックな空間とし、両翼に寝室や水回りを構成。多人数のグループが快適に過ごしやすい別荘の形を目指した。

奄美大島では沖縄諸島同様にいわゆる観葉植物として眼にする亜熱帯性の植物が露地(外)に自生している。今回既存樹に加えていくつかの樹種(プルメリア、フクギ、ハイビスカス、ブーゲンビリア、カポック、コンシンネなど)を地元植物園と協業し追加補充している。普段屋内で眼にする植物が庭先にあり育っている環境を眼にすることは心理的な開放性の一助になっていると感じる。
そういった植物のシーンがそれぞれ田中一村の絵画のように開口部でトリミングされることをイメージし、開口部設計に力を込めている。


一方、現在奄美大島を代表するソテツの虫害が問題になっている。設計活動の中で丸坊主になり枯死してしまったかのようなソテツの姿に危機感を覚えた。
今回SANUとの出会いがあり建築と自然について想いを馳せる機会を得た。その思考の延長線上にこのような事象に対して思いを巡らせ自分達にできることを考えることも設計者としては必要なことだと考えさせられている。

竣工2024年10月
所在地鹿児島県奄美市
用途ホテル
施工有限会社 アオイ・ホーム
構造木造
延床面積130.03㎡
担当者古谷俊一 豊島香代子 毛綱康三
SANU webサイトhttps://2ndhome.sa-nu.com/facility/mon