酒造りの原材料となる棚田(米)と九頭竜川の流れ(水)そしてその水を生み出す山々の木々。
それらの景観をすっと引き込むため、200mm×200mm、4.8m ピッチの鉄骨ラーメンが最大積雪2.25m の無落雪屋根を支えるスレンダーな構造である。飲食スペースからも景観を楽しめるようにテラスの四周は一段落ちたコンクリートの片持ちスラブが張り出されており、ベンチに座った人影が店内からの眺望を遮らないようにしている。そのスラブラインがそのまま棚田と同調し約50m の大きな涼み台のように棚田に浮かんでいる。
テラスの軒下となる 1 階には必要最低限の諸室を設けた他はおおよそ周囲のランドスケープ( 土中の岩石、棚田の畝を構成する野草) が貫入し、前面の広場から景観とともに人々が建物に引き込まれていく。
棚田の一面が浮遊し突き出したような格好の建築は季節や太陽の角度によって刻々と移り変わる風景を楽しみながらお酒を楽しむ場として「酒楽棟」と名付けられた。日本酒の製造、試飲、販売、飲食及び休憩などの機能を内包する室内と甲板のようなテラスがセットになった建築である。
スギを中心とした山々のみどりと悠々と流れる九頭竜川、サクラやアジサイに彩られる鮎街道。これらの景観が室内外を区切るガラスに透過反射し、映像のような景観と実際の景観が折り重なり現れる。
所在地 | 福井県吉田郡永平寺町 |
用途 | 飲食店舗 物販店舗 |
竣工 | 2022.04 |
施工 | 村中建設 |
敷地面積 | 8,029.23㎡ |
建築面積 | 1,117.53㎡ |
延床面積 | 1,502.05㎡ |